はじめに
子育てや介護をしながら働く人が安心してキャリアを築ける社会を実現するために制定されたのが「育児介護休業法」です。2025年4月と10月には大幅な改正が行われ、より現実的で利用しやすい制度へと進化します。特に、両親が協力して育児休業を取得することで実質的に“手取り10割”を実現できる給付金制度の新設や、柔軟な働き方制度の義務化など、子育て世代にとって大きな追い風となる内容が盛り込まれています。本記事では、改正内容の詳細や活用のポイント、企業の対応策までをわかりやすく紹介します。
2025年改正で何が変わるのか
2025年の法改正は、単なる支援制度の見直しではなく、働く親たちが実際に利用しやすい社会的な仕組みを整えるものです。改正の主なポイントは、以下の3つです。
- 給付金の手取り10割相当を実現する新制度
- 子の看護等休暇の対象年齢・事由の拡大
- 柔軟な働き方制度の義務化
これらにより、経済的不安を感じることなく、安心して家庭と仕事の両立ができる環境が整備されます。
両親で育児休業を取ると手取り10割に近づく仕組み
2025年4月から導入される「出生後休業支援給付金(13%)」は、両親がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合に支給される新制度です。既存の育児休業給付(67%)と合わせることで合計80%の支給額となり、さらに社会保険料の免除を加味すると手取りがほぼ100%に近づきます。つまり、共働き夫婦が協力して育児休業を取るほど家計への影響が軽減される仕組みです。初めての子育てでも、安心して休業に入ることができる環境が整っています。
社会保険料免除のメリットと申請の流れ
育児休業中に健康保険料や厚生年金保険料が免除されるのも大きなメリットです。これは月末時点で育児休業を取得しているか、もしくはその月に14日以上育児休業を取っている場合に適用されます。免除期間中も被保険者資格は維持され、将来的な年金額にも影響しません。手続きは事業主が年金事務所へ申請を行い、本人の負担を軽減します。このような仕組みにより、収入減だけでなく将来への不安も軽減されます。
子の看護等休暇の拡大で学校行事にも対応
2025年4月からは、「子の看護等休暇」として制度が拡充されます。対象年齢は小学校就学前から小学校3年生修了までに引き上げられ、病気やけがに加え、学級閉鎖、入学式・卒園式、健康診断なども取得理由として認められます。さらに時間単位での取得が可能なため、半日勤務や時差勤務との併用も容易になりました。仕事を続けながら子どもの行事に参加しやすくなり、家庭と仕事の両立がより現実的なものとなります。
3歳以降も柔軟な働き方が選べる新制度
2025年10月から施行される「柔軟な働き方制度」は、3歳以上小学校就学前の子を育てる社員に対して企業が選択肢を提供する義務を負うものです。フレックスタイム制、テレワーク、短時間勤務、育児目的休暇などのうち、少なくとも1つを導入する必要があります。企業が柔軟な制度を整えることで、育児中の退職やキャリア中断を防ぎ、長期的な人材活用につながることが期待されます。
男性の育休取得率向上と企業の情報開示義務
男性の育児休業取得率は年々上昇し、2023年度には30%を突破しました。しかし依然として短期間にとどまる傾向があります。こうした課題を解消するため、改正法では従業員300人超の企業に対して男性育休取得率の公表を義務化しました。情報の透明化により、社会全体で育休を取りやすい文化を醸成する狙いがあります。企業は数字を示すだけでなく、取得を促すための教育や社内体制の整備も同時に進めることが求められます。
企業が準備すべき対応と制度整備のポイント
改正に合わせて企業が行うべき対応は多岐にわたります。まずは就業規則への反映です。柔軟な働き方制度や子の看護等休暇の改定内容を明記し、全社員に周知することが求められます。また、代替要員の確保やテレワーク環境の整備、管理職への研修実施も重要です。特に育休取得者をサポートするチーム体制を整えることで、現場での混乱を防ぎ、制度を実効的に運用できます。
仕事と子育てを両立するための実践アドバイス
育児介護休業法を上手に活用するには、計画的なスケジュール管理が不可欠です。出産予定日や業務の繁忙期を考慮し、上司や人事担当者と早めに相談しておきましょう。育休中も定期的に職場との連絡を取り、復職後のサポート体制を確認しておくとスムーズです。給付金申請などはハローワークや都道府県の雇用環境・均等部を活用すると安心です。
今後の展望と社会の変化
政府は2030年までに男性の育休取得率を50%に引き上げることを目標としています。今回の改正はその実現に向けた大きな一歩です。今後はテレワーク、副業制度、キャリア支援など多様な働き方を組み合わせた新しい労働モデルが拡大していくと予想されます。育児休業が「特別」ではなく「当然」となる社会への変化が進んでいくでしょう。
まとめ
2025年の育児介護休業法改正は、子育て世代にとって画期的な変革です。両親で協力して育児休業を取ることで経済的にも安定し、仕事と家庭を両立できる環境が整います。企業も従業員の多様なライフステージを支える制度設計を進めることで、持続可能な働き方を実現できます。制度を理解し、自分らしい働き方を選びながら、家族とともに安心して未来を築いていきましょう。

コメント